「集中」とは


■「集中」その簡単そうで難しいこと

 「集中しなさい」「もっと集中すれば…」
 大人から子供まで、よく聞くフレーズです。でも、「集中」ってなんなのでしょう?
 あなたは、自分の「集中」について説明できますか?
 もしそれに答えが出ないとすれば、あなたは集中できていると言えるのでしょうか?
 いきなり、厳しい問いかけで入りましたが、「集中」という言葉ほど、幅広く、どんな場所でもどんな時にも使われ、しかしその実体が見えにくい言葉はないのではないでしょうか。
 しかし、勉強でもスポーツでも、集中することが勝負を分けることは多くあります。
 集中という、非常に聞きなれ、よくわかっていそうで、その実なかなかどういうものかわからない、この悩ましいものについて、ここでは一緒に考えていきましょう。

■集中の基本

 集中するとはどういうことかを考える前に、そもそも「集中」という言葉について確認しておきましょう。
 集中とは、対義語が「分散」つまり、ひとつの場所や時に集まることが集中です。漢字の構成も、「中に集まる」ですね。
 ここに、集中の謎を解くカギがあります。
 私たちは、日常の中でほとんど集中していません。それは、一つのことや物に意識をとどめておくのが非常に難しい、ということで、それは、ためしに5秒間でも集中しようとすればすぐにわかります。
 これを分かりやすく体感していただきます。
 あなたは今、パソコンや、スマホ等の画面を見ながら、この文章を読んでいるでしょう。では、これから10秒間、「▲」の記号だけに集中してください。
 他の文字や画面の部分は一切見てはいけません。では、どうぞ!
 どうでしょう? 難しくありませんでしたか?
 これは、「見る」ということ以外でもそうです。
 私たちは、いわゆる「五感」を通じて、常にさまざまな情報を受信しています。それだけではなく、「頭脳」から、過去や未来について様々なことを考えています。
 集中とは、そのチャンネルをできる限り遮断し、ひとつに絞る、ということなのですが、それが非常に難しいのです。
 今、この文章を読んでいる瞬間にも、夕飯のメニューや、耳がかゆい事や、隣の誰かの発する音が気になっているかもしれません。
 そして、気になればなるほど、そちらの方に「集中」してしまうかもしれません。
 私たちの脳の処理能力は高く、その能力が高いために、集中することが難しいのです。
 これは、おそらく私たちが、大昔にどういう暮らしをしていたかに影響されているのでしょう。
 トラやライオンのような肉食動物は、集中することが非常に重要になります。ですが、そのような肉食動物に襲われる側の生き物たちは、むしろ集中は生存のために邪魔になります。
 エサを食べている時も、寝ている時も、「集中」せずにいないと、大変なことになります。危険は、どこから迫ってくるかわからないからです。
 考えてみれば、私たちが「集中」を必要とするようになった時間は、集中すべきでなかった時間の長さと比べると非常に短いものです。
 この、新しい習慣が、まだ身についていないとしても、それは自然なことなのです。
 集中ということを考える時、このことを認識しておくことは非常に重要になります。
 私たちは、もともと集中できない、あるいは集中しにくい生き物なのです。
 それを、あえて集中する。集中できるとすれば、そこには特別な手続きや、工夫が必要となるのです。
 そのことを意識せず、「集中できるのが当たり前で、集中できないのは、能力や意識に問題があるから」という発想では、いつまでも集中力を高めることはできません。
 集中はできない、続かない。その前提をまずもって、その上で、できない集中を少しでもできるようにはどうするか? そして、続かない集中をどうすれば続けられるようになるか? それを問い、作戦を組み立てていく事が、集中につながります。
 できないからこそ、できることで差がつく。その力を、身に付けていきましょう。