集中を妨げるもの

■集中を妨げるもの

 皆さんの集中をさたまげる、最大の敵はなんだと思いますか?
 ゲームや、漫画の誘惑でしょうか。空腹? それとも疲労?
 集中を妨げる最大の敵は、集中力なのです。
 私たちは、自分が集中すべきものを選べません。というより、選んでしまうと危険なのです。
 これは、歩きスマホをイメージするとわかりやすいですね。歩きスマホをしていて、目の前に、フタの空いたマンホールがあるとします。本来、そこにマンホールに集中を移して、穴を避けたいところです。つまり、集中力を切り替える必要があります。
 ところが、スマホだけに集中していると、マンホールの穴に気が付かず、穴に落ちてしまいます。
 集中力というのは、本来は、私たちが生命の危険にさらされた時、それを避ける、乗り切るための力です。そして、それはどこから訪れるかわかりません。ですので、一つのことに集中しないことの方が、生き残るには大切なのです。
 とはいえ、それは野生の話。私たちは、そういった生物的な側面からある部分で切り離され、本来は生存のために危険な、「一つのことに集中すること」を求められる社会で生きています。
 だとすれば、ともすれば散漫になる集中力を戻す。その訓練が必要になるのです。
 どういうことかというと、そもそも、今集中したいもの以外に集中が向くことは防ぐことができません。ですので、集中したいもの以外に集中が向いたときは、速やかに、また集中したいものに意識を戻す必要があります。
 その、速やかに集中を戻す訓練を積んでいくのです。
 その訓練には、二つの大きなアプローチがあります。1つは、精神的な面からのアプローチ。もう一つは、身体的な面からのアプローチです。
 精神的な面からのアプローチは、気が散った時に、もう一度意識をすることで集中しなおすこと。身体的な面とは、ルーティーンに代表されるような、集中を戻す動作を決めておくことです。
 いずれにせよ、集中は乱れることが普通だ、という認識の下、どうやって戻すかがポイントになります。

勉強での集中力

■勉強での集中力

 勉強での集中力も、基本はスポーツと同じです。ですが、スポーツ以上に狭い、部分的な行動が多いのが勉強ですので、ある部分では、スポーツ以上に集中する範囲を限定する必要があります。
 また、勉強は通常、1時間とか2時間とか、長時間行います。もちろん、そのすべての瞬間に集中することは不可能ですので、集中を入れたり、切ったりすることも重要です。
 そのような特性を考える時、勉強では、集中しなくてもできることを増やしていく事がポイントになります。
 文章を読んだり、計算をしたりすることは、訓練で自動化していけます。
 そのように、訓練で自動化できる部分をいかに自動化するか、その精度を高めるかが、勉強でのポイントです。
 そして、自動化されたことは、集中しなくてもできることですので、勉強に必要なのは集中力ではないのです。
 では、勉強ではどのような部分で集中力を発揮すべきなのでしょう?
 ここでは、便宜上大学受験などの受験勉強に絞って考えますが、最も集中すべきなのは、見直しをするときです。
 自動化された手順の結果にミスがないか、それを発見することは、勉強のプロセスの中で最も難しいことです。
 最も難しい事には、最も高い集中力が必要とされます。しかも、その時に「ミスを見つける」という漠然とした考え方では、なかなかミスを見つけることはできません。
 計算ミスを見つけたいのなら、計算の中で、どのようなミスが、どのように起こるかを把握したうえで、その点に集中する必要があります。
 そしてその、どのようなミスが、どのように起こるかを把握するのが、通常の勉強(試験勉強など)の目的です。
 ここまでが、問題を解く場合の集中でした。では、暗記などでは何に集中すればよいのでしょう?
 暗記などでは、今暗記していることを、自分自身に印象付けることだけに集中します。
 ノートに書いて練習するのも、英単語を発音するのも、すべては印象付けるための手段です。これらの手段を取っても、印象付けられなければ効果はありません。
 ですので、印象付ける、という一点に集中する。それが、暗記の時の集中の仕方です。

スポーツでの集中力

■スポーツので集中力

 スポーツでの集中力を身に付けたければ、まず自分自身が、そのスポーツのどの瞬間に集中すれば最も効果的かを考える必要があります。
 そして、その最も効果的な瞬間に、曽於行為そのものに集中すること。それが、スポーツで集中するためのコツです。
 たとえば、テニスをしているとしたら、ラケットにボールが当たる瞬間が最も集中すべき瞬間です。ですので、その瞬間に集中できるようにトレーニングしていきます。
 これは、球技一般に共通するポイントです。いわゆる、「インパクト」の瞬間に集中するのです。
 格闘技や武道などでは、自分というより、相手に集中することがほとんどです。
 自分自身からの攻撃を練習によって自動化し、その自動化された攻撃を、相手のどんな状況に応じて出すかに集中するのです。「融通無碍(ゆうづうむげ)」つまり、あらゆることを柔軟に、自由自在にできる境地が、武道の究極とされますが、対人競技ではこのような集中の仕方が重要になります。
 陸上などでは、このような明確なインパクト・ポイントがないこともあります。ですので、競技者が自分自身の特性に合わせ、何に集中するかを決めます。
 腕の振りに集中する人もいれば、呼吸のリズムに集中する人もいるように。
 また、集中しないことも、ひとつの集中力です。
 これは、部分を意識しすぎると、全体がうまくいかない場合に必要となる集中力です。
 野球のピッチャーなどが、「腕の振りだけに集中した」というような場合です。
 たとえば、ボールを離す瞬間や、ストライクを取ることに集中すると、そこだけに視点が行ってしまい、全体がスムーズでなくなってしまうことがあります。
 そんな時に、いったん集中しないことに集中し、全体の流れを取り戻す。これも、大切な集中力です。
 コーチや監督の仕事は、このような競技のポイントを、競技者の特性に従って教え、どこに集中すべきかを明示することでもあります。
 それができる指導者こそが、名指導者と呼ばれるのでしょう。