作業療法士は、身体や精神に障害を持つ方々に対して「作業」を通して回復や社会復帰を支援する国家資格の専門職です。
高齢化や精神疾患への関心が高まる現代において、リハビリテーションの需要は年々増加しています。
本記事では、作業療法士の仕事内容や働く場所、資格取得方法、そして将来性について最新情報を交えて詳しく解説します。
よくある質問
作業療法士(OT)とは?理学療法士(PT)との違いは?
作業療法士は日常生活や就労・余暇などの作業活動を通して生活機能の回復を支援する国家資格です。PTが基本動作中心であるのに対し、OTは食事・更衣・家事・就労など社会参加に直結する活動を中心に支援します。
対象となる主な疾患・状態は?
脳血管障害、整形外科疾患、神経難病、外傷、認知症、精神障害、高次脳機能障害、小児の発達障害、老年期のフレイルなどが対象です。
具体的な仕事内容は?
評価・目標設定・訓練、環境調整(福祉用具・住宅改修)、職業復帰支援、家族指導、他職種連携、記録・再評価などを行います。
どんな職場で働けますか?
病院、介護老人保健施設、通所・訪問リハ、障害者支援施設、リハ専門クリニック、教育・行政・研究機関などです。
勤務形態や働き方の特徴は?
常勤が中心ですが、非常勤・パートや訪問リハでの柔軟な働き方も増えています。夜勤は少なめですが施設によっては当直等がある場合があります。
初任給や年収の目安は?
新卒の初任給は月約21万〜25万円(学歴・地域・法人で差)。賞与・手当込みの年収は新卒で約300万〜400万円が相場です。
将来性はありますか?
高齢化や在宅医療、小児・精神科・地域リハの拡大により需要は堅調で、就職率も高水準です。
作業療法士になるには?
大学や専門学校の養成課程を修了し、作業療法士国家試験に合格する必要があります。海外資格保有者は所定の認定が必要です。
国家試験の概要は?
例年、試験は2月下旬、合格発表は3月下旬、試験地は全国8か所、受験手数料は目安で10,100円です。年度により変更があるため最新の公式情報をご確認ください。
学生のうちに身につけておくべきことは?
解剖・生理・運動学の基礎、ADL評価、認知/精神領域の理解、記録・カンファレンス力、エビデンスの読解、プレゼンや指導スキルなどです。
福祉用具や住宅改修との関わりは?
自助具・補助具の選定と訓練、環境評価、手すりや段差解消等の住宅改修提案を通じ、実生活での自立を支えます。
キャリアパスは?
専門領域特化、主任・教育担当、管理職、大学院進学、研究・教育、訪問/通所リハの運営や起業など多様な選択肢があります。
仕事のやりがいと大変さは?
生活機能の再獲得・社会参加を支援できるやりがいが大きい一方、長期支援による負荷や調整・記録業務の多さもあります。セルフケアとチーム体制が重要です。
どこで最新情報を確認できますか?
厚生労働省や試験免許室の公式発表、日本作業療法士協会、各養成校の募集要項・説明会情報を確認してください。
作業療法士とは?仕事内容を解説

「作業」とは、日常生活における食事や着替え、趣味、仕事、遊びなど人間の営みに関わるあらゆる活動を指します。
作業療法士は、これらの作業活動を通じて心身機能の回復や生活の質の向上を目指します。
対象者は、けがや病気で身体機能が低下した方、精神障害のある方、発達障害の児童、高齢者など多岐にわたり、絵画・陶芸・音楽・手工芸・レクリエーションなどの活動を用いたリハビリを実施します。
理学療法士との違い
理学療法士が「歩く・立つ」などの基本的な動作の回復を支援するのに対し、作業療法士は「食べる・着替える・仕事に就く」など社会生活に直結した応用的な動作能力の回復を支援します。
活躍の場と勤務形態
作業療法士は以下のようなさまざまな施設で活躍しています。
- 病院(一般病院、精神科病院、小児病院など)
- 介護老人保健施設
- 訪問看護・訪問リハビリテーション
- 障害者支援施設・障害児施設
- リハビリ専門クリニックや通所施設
近年は高齢化社会の影響で、老人保健施設や在宅医療におけるニーズも急速に高まっています。
常勤・非常勤・パートといった雇用形態があり、働き方の選択肢も多様です。
初任給と収入事情
厚生労働省の統計によると、国立病院機構における作業療法士の初任給は以下のとおりです(2026年時点・目安)。
- 4年制大学卒:月額 約230,000円~250,000円
- 短大・専門学校卒:月額 約210,000円~240,000円
一般的に短大または、専門学校卒は、4年制大学卒よりやや低めになっています。
ボーナスや手当を含めた年収は、新卒で約300万円〜400万円が相場です。
勤務先や地域によって変動があります。
将来性と需要
作業療法士の就職率は毎年高水準で、ほぼ100%に近い水準を維持しています。
リハビリ分野は医療・福祉の中でも特に人材不足が指摘されており、今後も安定した需要が見込まれます。
特に精神科リハビリや小児リハビリ、在宅医療分野でのニーズ拡大が期待され、理学療法士と並び今後も有望な国家資格といえるでしょう。
作業療法士になるには?資格取得方法
作業療法士は国家資格です。
資格取得には以下のいずれかの養成課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
受験資格
- 作業療法士養成課程のある大学(4年制)や専門学校(3~4年制)を卒業
- 外国の作業療法士資格を持ち、厚生労働省の認定を受けた者
参考サイト:グッピー
試験概要(2026年度)
- 試験日程:筆記試験、口述試験及び実技試験 2月下旬、合格発表 3月下旬
- 試験地:全国8か所(北海道・宮城・東京・愛知・大阪・香川・福岡・沖縄)
- 試験科目:
- 解剖学・生理学・運動学・病理学概論
- リハビリテーション医学・臨床心理学・人間発達学
- 臨床医学大要・作業療法
- 受験手数料:10,100円(2026年現在)
詳細は、公式サイトよりご確認下さい。
まとめ
作業療法士は、人の暮らしに寄り添い、心身の回復を支援する重要な専門職です。
働く場は医療・福祉施設にとどまらず、在宅医療や教育現場にも広がっており、今後もさらに活躍のフィールドが広がっていくことでしょう。
国家資格取得のための道のりは決して簡単ではありませんが、それだけにやりがいも大きく、社会に貢献できる素晴らしい仕事です。
問い合わせ先
厚生労働省 医政局 医事課 試験免許室
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
TEL:03-5253-1111 FAX:03-3503-3559
一般社団法人 日本作業療法士協会
〒111-0042 東京都台東区寿1-5-9 盛光伸光ビル7F
TEL:03-5826-7811 FAX:03-5826-7872
公式サイト:https://www.jaot.or.jp/
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